楽天

2011年4月22日金曜日

狼と香辛料 2 2/3



狼と香辛料 2 2/3






どこにでも居る
普通の行商人さ。



いやいや
あの年寄り夫婦には
あっしも目をつけていたんですが
なかなかきっかけが掴めなかった。
旦那は
それをあっさりやってのけちまったんだから。



俺も駆け出しのころは
行商人全部が化物に見えた。
今でも半分以上は化物だ。
頑張る事さ。



えっへへ。
そう言ってもらえると安心だ。
あっしはゼーレンと申しやす。
へ。



ロレンスだ。



駆け出しですが
どうぞよろしく。
そちらは連れの方で?



妻のホロだ。



へぇ。
夫婦で行商ですか。
外套なんかすっぽりかぶせて
よほど大事にしていらっしゃる。



それほどでもないが・・・



ここで会ったのも神の思し召し。



ぁ?



どうか
ひと目拝ませてもらえませんかねぇ。



いやぁ・・・



旅はいで立つ前が最も楽しく
犬は鳴き声だけが最も恐く
女は後姿が最も美しいものでありんす。

気軽にひょいとめくれば
夢はあぁいずこ。
わっちにはそんな事できんせん。



ぉ・・・ぁ・・・
あっは。
凄い奥さんですねぇ。



尻にしかれないようにするのが精一杯だ。



こんな凄いお二方に出会えたのも
天のお導きだ。
どうです、旦那?
ちょっとあっしの話を聞いてくれませんか?
へ。






キィ



ん?



良い匂いじゃの。
茹でたジャガイモにこれは・・・
ヤギのチーズかや?!



ちょっと待て。



ぇ?!

ぁ・・・
麦かや?



首から下げられるよう
皮ひもも付けておいた。



うむ。
助かる。



ぅん。



しかし何はともあれ
こっちじゃ!



ちょっと待て!



ぇ?!



皮ひもと麦袋
それにチーズも奮発して
教会への寄付は結構な金額だ。
請求は覚悟しとけよ!



言いたいことはそれだけかや?



ん・・・
あぁ・・・



はむ、はむ。
ほんなことは
わかってほふ!



ん・・・



ぅん。
人の育てた野菜は苦悩より美味いな。
火を通すという発想も好きじゃ。



お前そんな一度に・・・



ん!
くっくっく。
ぷはぁ。

はぁ。
びっくりじゃ。
人間の喉は相変わらず狭いの。
不便じゃ!



狼は丸呑みだからな。



うむ。
そりゃぁほれ
頬が無いんじゃ。
悠長に噛み砕けん!



なるほど。



しかし
わっちは昔もジャガイモを呑んで
のどを詰まらせた。
どうもジャガイモとは相性が悪い。
こいつめ!






お前
嘘が聞き分けられるとか言ってなかったか?



ん?
まぁ多少はの。



どの程度だ?



パン



ぁ?



まぁぬしがその気もないのに
わっちの尻尾を褒めたのがわかる程度じゃ。



ん・・・



百発百中ではありんせんがな。
信じる信じないは

ぬしの勝手じゃな。



ん・・・
じゃぁ信じて聞こう。
あの小僧の事もわかるか?



小僧?



暖炉の前で話しかけてきたあいつだ。



あ~ぁ。
ふふ。
まぁ、わっちから見れば
どっちも小僧じゃが。



む・・・



うふ。
ぬしのほうが少しだけ大人じゃがな。

あの小僧の
あの話か・・・






実はね旦那。
今出回ってるある銀貨が
近々銀の含有率を増やして
新しくなるって噂があるんでさ。



ほぉ。



さすが驚かないね。旦那。
新しい銀貨はよその国の金に替えれば
今の銀貨より高く替えれるんですぜ。
つまり・・・



つまり今のうちに銀貨を集めておいて
新しいのが出たと同時に交換すれば
差額の分だけ大もうけできると言う訳か。



どうです?
どの銀貨かお教えする代わりに
旦那が大もうけしたあかつきにゃぁ
あっしに分け前を貰えませんかねぇ?






何がどうとは言えんが
あの話は嘘じゃな。



貨幣の投機自体は珍しい事じゃない。
だが・・・



嘘をつく理由がわからない。



ぁ!



じゃろ?

嘘をつく時
大事なのはその嘘の内容ではなく
なぜ嘘をつくかと言う
その状況じゃ。



ぁ・・・ぁ・・・
お前・・・
俺がそれに気づくまで何年かかったと思う?



気にすることはありんせん。
ぬしもまた小僧なのじゃからな。



ぉ・・・



それよりも
わっちが居らんかったら
ぬしはどう判断するよ?



ん・・・
ん。

本当か嘘かの判断は保留にして
とりあえずゼーレンの件は呑んだように振舞うな。



それはなぜかや?



本当ならばそのまま儲けに乗ればいいし
嘘だったら
誰かが何かを企んでいるという事だから
注意深く裏を探っていけば
大抵は儲け話につながるはずだ。



ふ~ん。
じゃぁわっちが
あの話は嘘だと言ったら?



ぁ・・・



ぬしは初めから迷う事などありんせん。
どのみち乗ったふりをするんじゃろ?



ん・・・



わっちは賢狼ホロじゃ。
はむ。
ぬしの何倍生きとると思っとる。






ゴーン
ゴーン



ん・・・んん・・・
ぁ・・・
ぁ?






パシャ

ぅ・・・ぅん。



バタン
キィ



ぁ?



ぁ!



ぁ・・・あいつ!
な!
ぁ・・・
ぁ・・・



わっちの旦那様の肝が
太くなりますように!



ぁ・・・



チャリン



うむ。



ったく。



ふふ。
しかしあ奴らも偉くなったもんじゃな。



教会は
昔から偉いだろ。



いやいや。
わっちが北から来たころは
まだそんなでも無かったわいな。

少なくとも
唯一神が世界を創り
人はその世界を借りている・・・
なんて大げさな事は
よう言わぬ。

自然は誰かが作れるようなものじゃ
ありんせん。

0 件のコメント: