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2011年5月17日火曜日

狼と香辛料 7 2/3



狼と香辛料 7 2/3






つつましく生活すれば銀貨1枚で7日は暮らせる。
その35倍だぞ。



なかなかのものじゃな。

じゃが
この服も店で金貨2枚と言われた。
リンゴなどとは違って
服というのは金貨で買うような
品ではないのかや?



もしそうなら
町の人間の大半は丸裸だぞ。
それを売った服屋の主人だって
本当に支払われるか
相当心配なはずだ。



ふむ。
これはそんなに高かったのかや?



その通り。
だからこれから買う服は
貧相なやつにしろ。



わっちはヨイツの賢狼ホロじゃ!
身にまとう物が貧相であっては
名に傷がつく!



本当に美しいものなら
何を着ても栄えると言うがな。



ぁ・・・



しかし両替か。



おぉ!
両替かや?



ぁ?



となるとあの橋の上じゃな。



ぁ・・・あぁ・・・



ほれほれぬしよ!
ちゃっちゃと歩かぬかや?
わっちは早く酒が飲みたいんじゃ。






はぁ。
リュミオーネだと
トレニー銀貨で34枚ちょうどが
今日の相場ですね。



手数料は?



リュート銀貨なら10枚。
トリエ銅貨なら30枚。



リュート銀貨で払う。
うむ。



かしこまりました。
それでは・・・

おっと
お気をつけください。
道に落ちたものは
拾った者の所有物に
なってしまいますからね。



ワイズ。



なんだよ?



客は俺のほうなんだがな。



ふん。
金貨はその辺に置いておいてくれ。
俺は忙しいんだ。



大事なお客様の相手もしてないのにか?



当然だ!



ぅぁ・・・



大事な娘様が
銀貨を落とさないようにするほうが
重要だからな。

そうですよねぇ。



あら
うれしや。
しかし、ぬしさまよ。



何でございましょう?



わっちの手には
この銀貨は少し多すぎるようでありんす。



あぁ・・・
ホロさん。
だからこそ私の手があるのです。



まぁ!
でもいけませぬ。
それではぬし様の大事な手が
ふさがってしまいんす。



いいえ。
あなたの手から銀貨がこぼれ落ちるなら
喜んで私の手を使いましょう。
それで私が困る事などありません。

なぜならホロさんは私の胸の中にある
両腕でも抱えきれないような
熱い思いをそっくり受け取ってくれるに
違いないのですから。



ワイズ!
両替商の基本を忘れたのか?!
銀貨は袋へ。
金貨は箱へ。
手に握るなら粗末な銅貨だろ!



ぅ~ん
まったく!
こんなにいい子を独占するとは
神をも恐れぬ所業だな。

汝の持てるパンを分け与えよ
という言葉を知らないのか?



分けて欲しいか?



ん?



だが両替台の上に貸し借りは無い。
丸ごと引き渡すか否か?
だ。



ふん。



そうなれば
こいつが俺にしょっている借金も
ついてくるから
それなりの覚悟を示してもらう必要があるが?



ぅ・・・
ぁ・・・

あなたに値段をつけるなんて
私にはとても出来ない!
何という事を言うのでしょう。
この悪徳商人め!



うっふ。
わっちの心の中の天秤は
未だ揺れ動いている最中でありんす。
でも信じてくりゃれ。

決して金貨の重みでどちらかに
傾いている訳では・・・



もちろん!
勿論ですとも。



ゆれる天秤に手で触れるなど
ぬしさまは本当に悪いお人。



あぁ・・・
ホロさん・・・



うん。
さて
そろそろ行くぞ。



おお・・・おい
ロレンス。



ぁ?



わざわざ金貨を両替しに来たと言う事は
何か買い物か?



そうだ。
日を追うごとに値段が上がるそうだからな。
早いほうがいい。



ぅ・・・



それじゃ。



両替と言うのは
日が暮れてからもやるのかや?



いえ!
日が暮れてから天秤を扱う両替商は
詐欺師と相場が決まっています!
もちろん私は詐欺師などじゃありません。



だそうじゃ。
ぬしよ。



服を買ったら早めに酒場へ行ってる。
仕事が終わってもし良ければ来てくれ。



もちろんだ!
兄弟!
酒場いつものところだな?



見知らぬ酒場で酔っ払うのは恐いからな。



了解だ!
すぐですから。
本当にすぐ参りますから!






くふ。
やはり予想通りに面白かったの。



あんまり本気にさせると
後々困るぞ。



困る?



つきまとわれる。



既にぬしにつきまとわれておる。



む・・・



あれはぬしと違って
わかって遊んでおる。
ぬしをからかうのも楽しいが
たまには賢い雄とも遊びたい。



はぁ。



どちらも遊びとわかっておるからの。
そんな真剣にならんでくりゃれ。
ぎゃくにわっちのほうが照れてしまいんす。



ふん。



ま、ワイズとやらは
ぬしよりもよほど口がたつがな
わっちは永いこと生きておるが
口から出る事ほど
当てにならぬものはありんせん。

商いの世界に生きるぬしも
それが全く解らぬわけでもあるまい?



あぁ
俺も自分が得をする為なら
いくらでも嘘をつくからな。



わっちには通じぬがな。



さて
それじゃぁ服を買いに行くか。



ぬしよ!



ぁ?



ぬしは2度ほど神の与えた幸福を
掴み損ねた。



ん?



今度こそ上手く掴まんと
幸福の尻尾は逃げていくかもしれないぞよ。



おい
どういう意味だ?
おい!
ホロ!
待てってば。






ふむ。



うむ。
そちらは40リュートですね。
値段のわりには丈夫かと。



あぁぁ・・・ん・・・



北に行きたいので
適当に厚くて
安いものを2人分見繕ってくれますか?



ぁ?



ご予算は?



トレニー銀貨2枚で。



お任せを。
上下の組み合わせに毛布も2枚つけて
こんな所でいかがでしょう?



ぅぅぅ・・・



そうですね。
私は見てのとおり行商人ですが
今回の旅でこちらの
ミローネ商会と懇意になりまして。



おぉ!
ミローネさんと・・・



えぇ。
ですからこれからは
年に数回来る事になりそうなんですよ。



いや
さようですか?
それではこちらの外套に
さらにもう1枚毛布をお付けいたしましょう。



ぅむ・・・



もちろん煙でいぶし済み。
2年は虫がわかないこと
請け合いです!



ぅむ。



ぅ・・・
は?

は?



ふふ。



ふぅ。
あぁ・・・



わっちの服を買いに来たのではないのかや?



そうだが。



はぁ。
わっちにあれを着ろと言うのかや?



そのローブだけで寒さをしのげると言うのなら
別に構わないが。



わっちがぬしの金を勝手に使った事に
怒っておるのならそう言いんす。
わっちは賢狼ホロじゃ。
頭も器量も良いが
鼻も良い。

あんな物を着た日には
鼻が曲がってしまいんす!



少しくらい辛い目にあったほうが
曲がった根性は治るかもしれないだろ?



ドス



ぉ!
ぉ・・・
怒るなよ。
種明かしをしてやるから。



ぁ?



店主
ちょっと相談が。



は?



はい?



女物の服で何か良いのはないかな?



女物ですか?



北の町でも困らない格好で
大きさはこいつに合わせて。



む・・・



ふむ。
わかりました。
お待ちください。



こちらなどいかがでしょう?
さる商家の衣替えの際
買ったものですが・・・

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