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2011年5月7日土曜日

狼と香辛料 5 3/3



狼と香辛料 5 3/3






わっちの名は
あのゼーレンと言う
若者から聞いたようじゃ。



話したのか?



ただの昔話だと思ってた。



わずかばかりの。



村の麦畑に住み着いて
その豊作、凶作を自由に操れる
狼の化身なんて・・・



わっちはあそこの土地に居ついて
何年経つかわからん。
尻尾の毛の数ほどおったかもしれん。
わっちは賢狼ホロじゃ。

豊作の年がなるべく出るようにと
時には土地を休ませるため
不作にしたりもした。

それでもこのわっちの管理じゃ。
他の土地よりはよほど良い麦の産地になったはず。

確かに村の者たちは
わっちを豊作の神として扱ったが
どちらかと言えば
敬うより拘束のほうが近い。

最後に麦の束を刈り取った者は
皆に捕らえられるじゃろ?



ぁ!



クロエはわっちに何と言ったと思う?
やつはな
わっちの名をゼーレンから聞いただけで
もしや・・・
と思ったそうじゃ。

わっちはな・・・
わっちはな・・・
情けないが
それが嬉しかった。

じゃがの
続けてやつはこう言った。



私たちが
あなたの機嫌伺いをする時代は終わったのよ。
あなたの気まぐれに
びくびくする必要なんて
もう無いわ。

あなたを教会に突き出して
私たちは古い時代から決別するの。



あぁ・・・



わっちはな・・・
わっちはな・・・
わっちは悔しくて!

ぅ・・・ぅ・・・ぅ・・・



なぁ
物は考えようだ。



ぁ・・・



北に帰るためには
どのみち土地を去らなきゃならんからな。
後ろ髪を引いてくれないなら
後ろ足で砂をかけてやればいい。
そっちのほうが思い切りもいいからな。

ただし
ただじゃ出ていかないぞ。
俺・・・
いや、俺たちは商人だ。
儲かれば何でもいい。
笑うのは金が入ってから。



うむ。



泣くのは破産してからだ。



うむ。



そして・・・
俺たちは笑うんだ。



・・・(ぅん)

あ~
す~っとした。
まぁ・・・



ぁ?



ドス!



ぅ・・・



ここ数百年
まともに会話しとらんのじゃ。
喜怒哀楽にもろくなっとる。

これでぬしの前で2度泣いたがな
ぬしの前でなくとも泣いたじゃろう。
何が言いたいかわかるかや?



勘違いするなと?



うむ。



俺も稼ぎの為に相手してやってるんだからな
ミローネ商会が話を持ちかけてくるまで逃げる事が
俺たちの仕事だ。

その最中にめそめそされると
足手まといになる。
だから
泣いてるのがお前じゃなくても
俺は・・・



ふむ。



ぁ・・・
お前・・・
ずるくないか?



ん?
雌の特権じゃろ?



ガタン



到着しましたよ。



ぁ・・・



そちらも一段落つきましたかな?



いや
メディオ商会の後ろについているのは
エーレンドット伯爵です。
伯爵領で麦の取引をしている商人が
銀貨の大口回収先です。
これをマールハイト氏に伝えてください。



お安い御用で。



やはり
儲け話を持ってくる人たちと言うのは
ちょっと違いますな。



この耳の事かや?



ふふん。
行商人に戻ろうかな?
と思いましたよ。
あなた達を見ててね。



やめたほうがいい。
あいつみたいのを拾う羽目になる。



なぁに。
荷馬車の御者台は一人では広いです。
願ったりかなったりですよ。



ふ。



ヒヒーン



わっちもぬしに拾われて
とんだ羽目じゃ。



やっぱり・・・
お前ずるいぞ。



そんなわっちも可愛いじゃろ?



まぁ
可愛いとは思うがな。



嬉しい・・・



ぁ・・・



ぬしも本当に可愛い男の子じゃの。



ったく!



ふふ。

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