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2011年7月2日土曜日

狼と桃のはちみつ漬け 2/5



狼と桃のはちみつ漬け 2/5






そらいくぞ!



なんじゃ?
これは・・・



こいつは驚いたな。
他の商会がもう店じまいだってのに
ここはこれからいよいよ本番って感じだ。



あの者たちが運んでいる物は
一体何かや?
角ばっていて硬そうに見えるという以外
何なのかよくわからぬが・・・



あれは資材ってやつだ。



資材?



建物を建てるときの材料になる物のことさ。
木や鉄を職人に加工させた代物だ。
これだけの量があるって事は
どこかでかなり大きな建築物を建てている最中のようだ。
しかも大急ぎだな。



なるほどの。
この商会はその職人に作らせた
資材とやらをどんどん現場に運んで
金に変えておるというわけじゃな。



あぁ。
在庫として保管する間もなく
買い上げられて
泉が湧くように利ざやが上がるわけだが
昼も夜も無く働かせ続けたくなるってもんだ。



ふ~む。

ぬしはどうするつもりなのかや?



ふふ。
まぁ見てろ。






あぁ
これは12番の荷馬車。
これとこれは3番
そっちが8番だ。
おい、絶対間違うなよ!



へ、へい。



旦那
加工した資材をお持ちしたんですが。



納品はこっちじゃない。
窓口は向こうの2つだ。



あい。
すみません。



ったく
よく見ろってんだ。



駄目よ。
アロンゾさん。
働いてくださる方たちには
もっと優しく接してくださいな。



クレア様
この状況でそりゃ無理です。
俺の性格をご存知でしょ。



うふふ。
まぁ多少は仕方ないけれど
程ほどにね。



ははははは。



カルロス
おしゃべりしすぎ!



へい。
すみません。



皆さん
大変だけれど頑張りましょうね。
私は今日
領主様と新たな交渉をしてきました。
この仕事が終わったら
みんなを必ず笑顔に出来ると思いますから
辛いけど乗り切りましょう!



へい!



へへへ
クレア様に励まされると
100倍頑張りたくなりますわね。



あら
じゃぁ儲けも100倍かしら?



お!



うふふ。



こんばんは。
責任者の方ですか?



ぁ?



人手が足りないからと言われて
荷馬車を引いてきたのですが。



おぉ、おぉそうかい。
えっと・・・
帳簿はどこだっけか?



新しい方ね?
私、このオオム商会の主人で
クレア・ハーミルトンと申します。



あなたが。
あぁ・・・
失礼ながらまだお若そうに見受けますが。



祖父が築いた店を父から受け継いで
守っているのです。



ほぉ。



はぁ、やっと見つかった。
この帳簿だ。
名前は?



あぁ、本名ですか?
通称ですか?
えっと・・・本名ですとその
いささか閉口するくらい長くなってしまうのですが。



あぁ、もういい。
すぐに荷を運んでくれ。



まぁ
アロンゾさんったらせっかちなんだから。



性分なんですみません。

で、あんた
荷馬車はどれだ?



あそこに停めてある
あれです。



なに?!
ありゃお前普通の・・・



行商用の荷馬車ですね。



はい。
たくさん積めた方がいいかと思いまして。



あんな車輪の細いのじゃ
早く走れんだろうが!
誰に頼まれた?



ぇ?
あぁ・・・
それは・・・



あぁ・・もういい。
何でもいいから
積めるだけ積んで出発してくれ。
今すぐにだ。



またせっかち。



えぇっと・・・
急な話でよくわかっていないんですが
賃金はどなたから?
それと資材の行き先は?



そんな事もわかってないのか!
細かいことはジルバンに聞け!



ジルバン?



あそこの机で書類の整理をしている
熊みたいな人よ。
お連れしますわ。



恐縮です。



その前に・・・



ん?



あなたの通称だけでも
教えてくださいな?



あぁ・・・
ぅうん。
ロレンスです。






また何やら雌に絡まれておるのかや?
まったく
宿と晩飯の調達をしておるようには
とても見えぬが
とりあえず野宿だけは回避できるものと
信じよう。

グゥゥゥ

それにしても腹が減った・・・






ジルバン。



はい。
クレア様。



この方に荷物の行き先と
賃金について教えてさしあげて。



承知しました。



ではロレンスさん
御機嫌よう。



ありがとうございました。



さて
行き先ですが
ルアイ村の北・・・
と言ってわかります?
木札が立っているはずなので
大丈夫だとは思いますが。
そこにあそこの荷を運んでください。

どれでも良いです。
運べるだけ運んでいただきたい。



手間賃は?



手間賃?
ぁ、そうでした。

え~っと
ルアイ村で荷物を渡すと
代わりに木札をもらえますので
持って帰ってきてください。
概ね、札1枚でトレニー銀貨1枚と交換です。



わかりました。
あ、では
もう一つお願いがあるのですが。



何でしょう?



実は急な仕事だったので宿が取れなくて
商会の部屋を借りられませんか?



うむ。
確か仮眠用の部屋が空いているはず。
そこをお使いください。



ありがとうございます。






グゥゥ

ぅぅぅぅ・・・もう駄目じゃ。
ひもじすぎて身体が起こせぬ。



ホロ!



ぇ!



待たせてすまん。
ここに泊まれる事になった。
食事も出してくれるそうだ。



ほぉ!
でかしたぞ!
ぬし。

ではとっとと部屋に移って飯じゃ!
ぬしも腹が減ったじゃろ?



いや
俺は仕事に行ってくる。



は?



一晩中この騒ぎだろうから
ちょっとうるさいかもしれないが
そこは我慢してくれ。



また商人としてそそられるような仕事に
遭遇したのかや?



あ・・・いや
そういう事では無いが・・・



だったらなぜ飯も食わずに行こうなどと?



逃げ足の速い尻尾を掴み損ねないため。
かな?



なんじゃ?
それは。



なるべく早く帰るよ。
お前は食事を済ませて
ゆっくり休んでてくれ。



ぬしはそれで良いのかや?



あぁ。



ふん。



おい、ホロ・・・

あぁ。
ふぅ。
やれやれ。



ヒヒーン



じゃぁ
まずは資材の積み込みだ。






あまり広い部屋ではありませんけれど
一応、窓から表も見わたせますので
おくつろぎいただけるかと思います。



贅沢を言える立場ではありんせん。
寒さがしのげるだけでも
ありがたい事じゃからのぉ。



そう言って頂けると・・・
どうぞ、こちらです。



ギィ



おぉ!
ベッドもなかなか立派ではないかや。
これなら連れが夜中の中途半端な時間に戻ってきても
気づかずぐっすり寝ていられそうじゃ。



うふ。
まぁ・・・
そんな・・・



ぁ?
いささか威勢のいい者たちが
集まったようじゃの。



騒がしくてすみません。
暫くこんな状態が続くと思いますので
それだけはご了承ください。



しかし
昼夜を徹して作らねばならぬほどの物とは
一体何なのかや?



水車ですわ。



ほぉ。
水車?



えぇ。
この辺りはもともと土地が肥えているのですが
今年は特に豊作で
生産高が飛躍的に上がった事で
粉を挽く回数も増えました。



うむ。



それだけではなく
多くの人たちが移り住んできたおかげで
鍛冶屋さんや染色
紡績などの仕事も増えて
その工程に利用するために
水車の需要が高まったんです。



そんな事にも水車が使われておったのかや。



けれど
水車が置かれる河は
貴族の方々の所有地ですから
なんと申しますか
さまざまな方面の利害やら思惑やらが
複雑に絡み合って・・・
町を二分するような・・・
正直申し上げて
醜い対立が起きまして・・・



なるほど。
それを収めるのに
無駄な時間を過ごしてしまったと言うわけじゃな。



えぇ。
結局町から外れた
ルアイ村に設置する事になったものの
日にちがずれにずれた為に
こんな真冬になってしまって。
けれども春は待ってくれませんから。



うむ。
確かに雪解けともなれば
河の水はたちまち倍になるからの。
そうならぬうちに作らねば
さらに無駄な出費が増えると言うものじゃな。



おかげで私どもは儲けさせて頂いてますが
ここまでの経緯が経緯だけに
実は少し複雑な思いがあるんです。



ぬしは優しい顔をしておるが
さすがはこれだけの商会を支える主じゃの。



ぇ?



自分の思いとは別に
どうすれば商売を成功させられるかを
心得て居るからこそ
ほぼ一手に工事のための手配を請け負う事が
出来たんじゃろ?
それは立派な商人の証じゃ。


連れが常々言っておる。



いえ
そんな・・・



ぬしはひょっとして
悪魔のような天使ではないかや?



ぇ?



いや
天使のような悪魔かもしれぬな。



ぁ・・・うふ。
商売の世界に身を置く女にとって
最高の褒め言葉です。
お礼にお食事をちょっと奮発しちゃおうかしら。



遠慮なく頂こう。



じゃぁ
どうぞごゆっくり。



バタン



ふぅ。
何なんじゃ?
あの女。

一時とは言え
わっちに空腹を忘れさせた。
天使かや?
それとも
悪魔かや?

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