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2011年7月7日木曜日

狼と桃のはちみつ漬け 4/5



狼と桃のはちみつ漬け 4/5






ギィ



ホロ!
待たせて済まなかったな。



済まなかったでは済まぬ。



そういうな。
ほら、これ!



これは・・・
桃の蜂蜜漬けではないか!



お前にこれをどうしても食べさせてやりたくてな。
そのために・・・
そんなへとへとになって・・・



あはは。
なんて事ないさ。
こんな・・・
ぅ・・・



あぁ!
ぬ・・・・ぬし!



すまん。
さすがにちょっと眠い・・・



ふふふ。
このままわっちの膝で眠るが良い。



ぁ・・・
気持ちいいな。
お前の膝。



ふふ。
こっちを向くでない。
ぬしの鼻がわっちの臍に当たって
こそばゆいではないか。



尻尾・・・



ぇ?



お前のふかふかの尻尾
抱きしめて寝ていいか?



あつ・・・
特別に・・・
許す・・・



ほんとにか?



ぅむ・・・
優しくしてくりゃれ。






おっと・・・
あつ・・・



ヒヒーン



夢か・・・
ぁ・・・
危ない危ない。
さすがに5度も往復すると
辛くなってくるなぁ・・・
ふふぁ。



俺は気力で6度目の往復をこなした。
再びあらぬ夢の情景を思い浮かべて。






これは!
桃の蜂蜜漬けではないか!



お前に
これをどうしても食べさせてやりたくてな。



そのために
そんなヘトヘトになって・・・



はははは
なんて事ないさ。



まったく
ぬしのくせに生意気な事をしおって。
わっちはどうすれば良いのじゃ?



ん?



どうすれば・・・
その・・・
この礼が出来る・・・



お前は賢狼だろ?
賢狼とは
相手の望む物を読み取ってこその
ものではないのか?



むぅ・・・
そんな反撃をくらうとは・・・



冗談だよ。
お前はそのままでいいさ。
そのままで十分。



いや
わっちなりに頑張る。
この麦粒を食べたら
ぬし好みに変身じゃ!
はむ。



うわぁぁ!


狼になったのかと思ったら
清楚な町娘に変身か?
ぅ・・・
その上何なんだ?
首輪なんかして!



わっちはぬしの飼い犬じゃ。



え?!



だから何なりと命令してくりゃれ。



おい冗談だろ?



冗談ではありんせん。
好きなだけ好きなことしてくりゃれ。



ゴクリ



ぁ・・・
じゃ・・・じゃぁ・・・
鼻の頭を・・・
あまがみしてくれないか?



ぇ?



あぁぁ・・・すまん。
い・・・いいんだ。
変なことを言ってしまった。



ふふふ。
お安い御用じゃ。



え?



では
良いかや?
はむ。






うわぁぁぁ!



ヒヒーン



おっと。
いかん。
今度はぬかるみにはまった。

ん!
こんな所で
挫折してたまるか!
ぬぉ!






コンコンコン



はい
どうぞ。



失礼します。



どう?
あの方は
その気になりそうだった?



お伝えすべきことは確実にお伝えしました。
後はあの方次第ですが。



必ず来るわ。
あの方は必ず来る。
賢明な方なら朝になれば絶対に考えを変えるはずよ。
あたしにはもう見えてるの。






俺は意地で7度目の往復をこなした。
だが8度目もやってやるつもりで
商会に戻ったところで
その気が変わった。



朝を向かえ
新たに加わる人々が後をたたなくなっていたのだ。
必然的に積み込みの待ち時間が増え
この先の実入りが減っていくことは
簡単に予想ができた。

しかし俺は
続けようとしていた仕事を打ち切って
あえて休憩をとる事にした。
人が少なくなる夜にかけて荷を運べば
もっと効率よく稼げるはず。
という可能性に賭けたのだ。

もうホロは起きているだろう。
勘のいい賢狼様だ。
俺のしている事の意味ぐらいは
とっくに理解しているだろうから
どんなふうに出迎えられるか
何となく楽しみだった。



ギィ



おはよう。

ぁ?
尻尾の手入れか?



・・・



ぁ、こういう部屋だったんだな。
まぁ確かに仮眠室だ。

はぁ・・・
うむ。
悪いがちょっと寝る。
お休み。



ドサ



あと2玉だそうじゃ。



ぇ?
1玉売れてもう1玉も遠からず売れそうじゃと。



お前
わざわざ確認しに・・・



大丈夫なんじゃろうな。



な・・・お・・・



1玉1リュミオーネ。
おいそれと買える様な値段じゃないし
それを買える様なやつがごろごろしているとも思えない。



そうかや。
それなら安心じゃな。



ぁ?!



なにせ
ぬしさまはさぞ稼いで来たんじゃろうからなぁ。



え?!



明日かや?
それとも今日の夜には稼ぎ終わるのかや?
昨夜から7度も荷を受け取ったようじゃが。




見てたのか?
ずっと・・・



他にする事など無いしの。
ぬしは全く気づかぬほど
一心不乱に働いておったから
稼ぎも相当なものに違いなかろう?



ぁ・・・いや・・・それが・・・
まだ銀貨で7枚・・・



7枚。
ほう・・・
今でさえ無理が出始めておる様子じゃと言うのに
ぬしはその5倍に当たる1リュミオーネとやらを
一体どのくらいで稼ぎ終わるのかや?



ぁ・・・ぁ・・・ぁ・・・
それは・・・



新たに仕事を求めてくる連中も
後を絶たぬようじゃから
ますます稼ぐのに時間がかかるようになる。
ここいらであきらめたほうが
良くはないかや?



ば・・・馬鹿言うな!
大体誰の為に・・・!



ん?



ぁ・・・
いや・・・

とにかく俺は寝る!
暫くほっといてくれ!



バサ



はぁ・・・






ん?
あぁ?
なんだ?
この騒ぎ?



カチャ



あ・・・な・・・
なんなんだ?
この人の数!
昨日の倍になっている!
あぁぁ・・・



もう良かろう。



あ?



なんでそこまでするのじゃ?



決まってるだろ!



キィ



ふぅ
たわけが。






荷揚げ場に下りたものの
呆然とした。
こんな状態ではおそらく稼ぎは昨夜の半分。
いや
下手をすればそれ以下だ。
目的の金額を稼ぐのに
1週間も2週間もかかってしまう。

さすがにそこまで
あの桃の蜂蜜漬けが売れずにあるという
自信はない。

もし売れてしまったら
ホロの機嫌が直らないまま
働き損という最悪な結末だ。
それだけは避けたい。
その思いが
俺に正常な判断を失わせた。






コンコンコン



はい。



ガチャリ



失礼します。



まぁ!
ロレンスさん!



ジルバンさんからお話を伺いまして。



賭けに挑戦してくれるのですね?
嬉しいです!



ぇ?



初めてあなたをお見かけした時
商人としてきっと聡明な方だと直感しましたの。



ぁ・・・
それはどうも。



よその方がこの町で働くには
役場で税を納めて就労許可票を貰わなければいけません。
でも
あなたはそれを持っていないでしょ?



ぅ・・・
ぁ・・・



それを確認するために
帳簿で管理しているけれど
あなたは
うちのアロンゾの性格をとっさに見抜いて
それをかいくぐった。



ぁ・・・
いえ・・・



良き商人には輝きがあります。
失礼ながらあなたは
それほど良い身なりではないけれど
その輝きを確実に持っている。



ぁ・・・いや・・・
何と言ったらいいか・・・



気に入りました。
ではまず握手を。



ん?
左手で・・・
ですか?



えぇ。
利き手と反対の手でお願いします。



わかりました。
よろしくお願いします。



ごつごつして
立派な手ですね。



ん?
んん?
手を・・・離しませんか?
そろそろ・・・



いいえ。
離しません。



ぇ?



賭けをするならこのままです。
それが決まりです。



そんな!



勝ったら
あなたのご希望の金額を差し上げます。



希望の金額を?
いくらでもいいと言うのですか?!



えぇ。
もちろんその分リスクもあります。
リスクというのは癪だけど・・・



どういう事ですか?



あなたが負けたら
わたしと結婚してください。



え?!



うふ。
問題は
商人としての資質を測るものです。
自信が無ければ
今すぐやめていただいて構いません。

どうですか?
あなたに商人としての意地がなければ
この手を離しますけれども・・・



ぁぁぁ・・・
ずるい方ですね。
あなたは。



うふ。
でも私
運を呼び込む女と言われてます。
結婚してくだされば
きっと商人として
大成功しますよ。



いいでしょう!
受けましょう!



では
この契約書にサインを。



このために利き手を?



そういう事です。



なるほど。
では私が勝ったら1リュミオーネ頂けますか?



あら
私の価値はそれっぽっちですか?



ん・・・
では50リュミオーネで。



わかりました。
ではロレンスさんが勝ったら
その金額をさし上げます。



金額を
契約書に書き込みます。
これで後戻りは出来ませんよ。



はい。
確かに契約は成立しました。



はぁ・・・
これであなたが出す難問に答えられれば
50リュミオーネもらえて
この手も離してもらえるんですよね?



いいえ。



え?!



問題に答えられたら勝ち
とは言いませんでしたよ。
その逆です。



なんですって?



あなたが答えを出せなければ
ご希望の金額をさし上げます。
でも見事にあなたが商人としての知恵で
答えを出せたら
私と結婚してください。



な・・・



つまりあなたが商人としてのプライドに勝って
それを捨てられれば
50リュミオーネが手に入るのです。



そんな・・・
馬鹿な・・・



契約書には
私が定める勝敗決定方式で
と書いてあったでしょ?



ぁ・・・

まさか
そうくるとは思いもしませんでしたよ。



うふ。
ちょっとだけ迂闊なところも
支えがいがあって素敵。



褒められた気がしませんね。



殿方は完璧すぎても駄目よ。
だからロレンスさんはとってもいいの。



ぁ・・・
問題を出してください。



うふ。
ではいきますね。

あなたには潤沢な資金があるとします。
そこでまだ誰も目をつけていない商売を
しようと思い立ちました。
それは
一体なんでしょう?



ぁ・・・
それが問題ですか?



えぇ。
あなたなら何か答えが出せそうな気がして。

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