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2011年7月8日金曜日

狼と桃のはちみつ漬け 5/5



狼と桃のはちみつ漬け 5/5






答えが無いわけではない。
多分誰も目をつけていないが
俺には豊富な財力があったら
試してみたい商売がある。

それは現物の無い商売だ。
教会や国など
土地の所有者の利害に則して
進められている経済では
金貨や銀貨の価値は
売るものが無い限り
広がらない。
そこに一石投じてみたいんだ。

この考えには少し自信がある。



うふ。
答え
ありそうですね。
やっぱり思ったとおり。

あのねロレンスさん。
私はこの店を愛しているの。
この世に生を受けて
辛い事や嬉しい事を数多く経験して
ひとかどの女になるまでを
ずっと見守ってきてくれたこの店を。

でもこの世界には壁がある。
だから私は最高の伴侶を求めているの。
あなたのようなね。



何と言う人だ。
これはつまり目をつけた相手に
50リュミオーネ払って
結婚を申し込んでいるのと同じだ。

逆に言えば実力があっても
金だけに走るような
プライドの無い男は見初めないと言う
自信の現れか。

いずれにしても
とんでもない人に気に入られてしまった。
何も思いつきませんと一言言えば
簡単に50リュミオーネ得られるが・・・



いかがですか?
ロレンスさん。



もう少し
時間をください。



いつまででも良いですよ。
こうして手を握っていられる時間が
長くなりますもの。



はぁ。
あなたと結ばれる男は
確かに幸せになれそうだ。



嬉しい。
では答えをくれますか?



今しばしお待ちを。

あるはずだ。
何か方法が・・・
最善の方法が・・・






バタン!



ホロ!
支度をしてくれ!



ん?
はぁ?
な・・・なんじゃ!?
ぬし。

あるじの女と
手をつないで飛び込んでくるとは
大した度胸ではないか!
その上支度をしろじゃと?



いろいろ事情があって不本意ながらこうなった!
不本意であると言う点を強調しておく!



あら
つれないんですのねぇ。



とにかくホロ!
来てくれ!



うわ!
放せ!
このたわけが!






ガラガラガラ



俺はすぐさまパン職人の工房に走って
大量にパンを買い
更に市場で肉を買い付けた。

そして野犬が出るという現場への
道の途中の地点に猛然と駆けつけた。
そこを通過する者たちが
空腹に耐え切れなくなる頃だ。






うわぁ!
ははははは!
これは爽快じゃ!



しっかり掴まっていろよ!



ぬしの考えは・・・



きゃぁ!



大体わかった。



とっちめるのは後にして・・・



きゃぁ!



ははは。
とにかく付き合ってやろう。



光栄です。
お姫様!



あはははは。



何なの?
この人。
どうしてこんなに動じないの?








ぇ?



さぁさぁ!
道行く商売人の方々
お腹の具合はいかがかな?
そろそろ我慢の限界でしょう。

そこで
我らはこうしてとびきりの昼食を
ご用意しました。



荒皮で包んで保温したのは
たっぷりニンニクを利かせて焼いた
羊肉じゃ。
そしてこっちの籠には切れ込みの入った
焼きたてパン。
2つの樽には葡萄酒がなみなみと入っておる!
我慢は身体の毒じゃぞ。



おぉ!
一つくれ!

俺にも!

俺にもくれ!

俺もだ!



しかしあんたら
よくこんなの無事に運んで来られたな。
途中にはほれ
今も聞こえる狼やら野犬やらが居ただろ?



あぁ
それなら全く心配は要りませんでした。
連れの一声は狼も黙るんでね。



まさか。



ホロ。



うむ。

ウォォォォン



きゃぁ!



うわ!

へぇ!

はぁ!



こりゃ凄い!

どういうまじないだ?



なぁに
ちょっとした大道芸のようなものじゃ。



しかし不思議と狼や野犬には効くんです。
この狼の真似が。



へぇ!
あんた凄い連れが居るもんだなぁ。



何の因果か狼より強い連れと出会ってしまい
もう尻に敷かれっぱなしですよ。
責任者、出て来い!
って感じです。



くだらん事いうな!
たわけ!



あっははははは。



ははははは。



なぁ~んだ。
やっぱりこの二人
息がぴったりじゃない。
結婚してないっていうだけで
入り込む余地無さそう。

手をつないでいるの
くたびれちゃった。



あぁ・・・
やっと離してくれましたか。



あなたってずるい人。
私のほうから手を離させるなんて。
想定してませんでした。



すみません。



ぬし
そこ謝るとこかや?



え?



そうですよ。
そこは勝ち誇らなきゃ。



ぁ・・・いや・・・
しかし・・・



ま、それがぬしらしい
とこじゃがの。



そ・・・そうか?



そうですね。
そんなロレンスさんは
やっぱりホロさんと一緒に居るのが
一番お似合いです。



クレアさん。



どうぞお二人でお幸せに。






うわぁ~あぁ・・・
桃の蜂蜜漬けも手に入ったし
万々歳だな。



まぁいろいろ言いたいことはあるがの。



あぁそうだ。
うわぁ。



どうしたかや?



ほれ
パンと羊肉。
1つずつ残しておいたんだ。
帰り道にでも食おうと思って。



ぬしにしては上出来じゃの。



そりゃどうも。
あ、ちょっと待ってろ。
今肉をパンにはさんでやる。



しかしぬしよ。



なんだ?



ぬしはこう
肝心なところがちょっと抜けていんす。



肝心なところ?



うむ。
どうせ最後にこんな趣向を見せるなら
もっと良い肉が食べたかった。
この肉はいまいちじゃった。



また文句か?



いや
肉への文句はまぁ良い。
最大の問題は
ぬしが一番大事なことに
まだ気づいておらぬという事じゃ。



一番大事なこと?
桃の蜂蜜漬けは手に入っただろ?
クレアさんがあきらめてくれただろ?
あと何が?



たわけ!



ドス



うわ!
いきなり何だ?
おまえ!



一番大事なこととは
一番当たり前で
普段気づかなぬような事じゃ。



え?!



まだわからぬのかや?



ぁ・・・
一番当たり前の事?



そうじゃ。
ぬし、パンをいくつ取っておいた?



2つだ。



羊肉は?



当然2切れ。
ぁ・・・



やっと気づいたかや?



あぁ・・・
はぁ・・・
ようやくわかった。

一番美味いのは
二人で楽しく食べる飯。



そうじゃ!
たわけ!



は・・・



ホロ。



な・・・なにを。
じっと見たりして・・・



すまなかった。



うわぁ!
い・・・いきなり抱きしめるでない!
しかも鼻・・・鼻・・・
鼻の頭を頬にすり寄せるなど
もってのほかじゃ!



あぁ・・・そうか
これは特別な意味を持ってしまうんだったな。



そうじゃ
たわけ。



じゃ
もう一度!



はぁぁ
やめよと言っておるのに・・・



あぁぁ・・・
嫌がるなよ。
ははは。



やめよ。






かくして俺とホロの旅は
ゆるゆると続くのだった。

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