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2011年7月10日日曜日

狼と香辛料II 0 1/3



狼と香辛料II 0 1/3


狼と琥珀色の憂鬱。






コン



いやぁそれにしてもノーラさんと出会えた事は
まさに神のお導きとしか思えません。
ノーラさんが居なければ
今の私のほろ酔い加減の笑顔も
無かったでしょうからね。



私もロレンスさんには
本当に感謝しています。
出会えて良かったです。



いえいえ
こちらこそ。



いえいえ・・・



コン



こちらこそ。



その上
金の密輸なんてとんでもない仕事まで
手伝わせてしまって・・・

正直なところ
まさか引き受けてもらえるとは
思いませんでした。



私もまさか自分が引き受けるとは
思いませんでした。



ぇ?



変ですね。
私。



ぁ・・・
はぁ。



きっといつかそういった
思い切った事をしなくちゃと
思ってたんです。
いつまでも
教会のお世話になってちゃいけないって。

だからロレンスさんは
私の命の恩人です。



そんな良いもんじゃありませんよ。
商人なんて自分本位なものです。



それなら私も同じです。



ぁ・・・



多分。



カタン



ぁ・・・

飲んでるか?
ホロ。



案ずるな。
勝手にやっておる。



ホロさんも一緒にお話しませんか?



ふ~ん。



ぇ?



なんだ?
もう酔っ払ってるのか?



湖を飲み干すと言われた
賢狼のわっちじゃ。
この程度で酔っ払うわけが無かろう。



了解。



ぁ・・・



という事なので
暫く放っておきましょう。



ぇ?
でも・・・



もう少し酒が入ったら
自然と会話に加わる。
それまで待っておれ。



じゃぁ待ってますね。



で・・・
何の話でしたっけ?



ぅぅぅ・・・



おぉ!
来た、来た。



わぁ!
おいしそう!

ありがとうございます。



お前も食うか?



勝手にやってるから良い。
しばらく放っとくんじゃろ?



そうだったなぁ。

何のはなしでしたっけ?



えっと・・・
私たちの出会いの話ですか?



あれ?
その前は・・・



あぁ
羊たちの岩塩の話。



あぁ、そうだそうだ。
いやぁ
羊が岩塩を見つけるとは
知りませんでした。



えぇ。
あの子達は塩気がとても好きで・・・
例えば
岩に塩を軽く刷り込んでおけば
いつまでもずっと舐め続けるんですよ。



ん?
じゃぁあの話も本当かな?



何ですか?



東のほうの話で
羊を使った
拷問があると聞いた事があるんです。
それは無いだろうと思っていたんですが。



羊で拷問ですか?



えぇ。
それが傑作なんです。

縛り付けた罪人の足に塩をすりこんで
そこへ羊を連れて来るそうなんです。

ぁ!



足に塩を・・・
はむ・・ぅ~ん・・・



ぁ!



怒りと共に覚えておこう。



すみません。
足に塩なんかしたら
羊が・・・



それはもう夢中で舐めますよね。



多分・・・



すると最初のうちはくすぐったくて
罪人は笑いまくるそうです。

うはははは。
笑い死ぬ。
笑い死ぬ。
あぁやめろ!



不思議な拷問ですね。



いや
実に変わっています。
それだけで羊たちは終わるはずも無く
足の裏を舐め続けて笑わせ続けたあげく
どうなると思います?!



どうなったんですか?



罪人は笑う事しか頭に無くなり
素敵な笑顔を
人々に振りまくようになりましたとさ。
めでたしめでたし。



・・・



本当ですか?
それ。



最後のところは
今つくりました。



いやだ。
ロレンスさんったら。



ははははは。

でもそこまでは本当です。
羊の心は計り知れませんね。



そう言えば
干し肉を食べた後の手を
羊たちが舐めたがって困りますね。
いいコたちなんですけど
なんて言うか
加減を知らなさ過ぎて
ちょっと恐いというか・・・



その点
お連れになっている騎士は
聞き分けが良さそうで。



ぇ?
あぁ。
エネクも時折頑張りすぎて
融通が利かないんですけどね。



ワン



ぅふ。
ごめんごめん。



くぅ・・・



いやぁ
本当にしつけが出来てますよね。
やはりノーラさんの羊飼いとしての腕が
確かなのでしょう。



いえ
そんな・・・



く・・・
あぁ・・・



ん?
なんだ?ホロ
もう酔ったのか?



酔ってなどおらぬ。



どこがよ。
しょうがない奴だな。



このわっちがたった3杯で・・・
酔うはずが・・・
なかろう・・・



ドサ



ぉ!
ホロ?



ぁ!






最近まで何百年と
一人で麦畑に居たせいだろうか?
毎日が何事もなく過ぎていき
昨日と今日の区別はなく
明日と明後日の区別もなかった。

時折思い出したかのように時間が進むのは
1年に1回の収穫の祭り。
2回の種まき祭り。

雨が降らないように祈る祭りと
風が吹かないように祈る祭り。
後は退屈な時間のかたまり。
祭りではないただの日々。

下手をすれば苗木が巨木になるのを
じっと見つめている事すらあった。

それに対して
旅と言うのは日々生まれ変わるに等しいくらいに
毎日が新鮮だ。

あの若い行商人と過ごしてきた日々は
たった数ヶ月が何十年分にも相当する。
朝に喧々囂々の喧嘩をしたかと思えば
昼には仲直りして
口についたパンのかけらを取らせてからかい
夕方は飯の取り合いでまた喧嘩して
夜は明日の事で静かに話し合う。

人と旅をしたり暮らしてきたことは何度かあった。

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