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2011年7月26日火曜日

狼と香辛料II 2 1/3



狼と香辛料II 2 1/3


狼と嵐の前の静寂。





うわぁ!


ぁ・・・

はぁ・・・






年代記作家?
あの町の日記を
ちまちまつけている奴らか?



日記と言うか歴史だな。



ふ。
貴族や教会に金を貰って
一日中座って字を書いているだけで
儲けちまうんだからなぁ。



年代記作家はあちこちの言い伝えなんかも
集めているだろう?
その辺を聞きたいんだ。



ほぉ?



ちょっと北のほうに用事があってなぁ。
道や土地の様子を知りたいんだ。



儲け話か?



だと良かったんだが・・・
純粋な道楽さ。
商人としては割りに合わないくらいだ。



よほど楽しい道楽のようだねぇ。



どうだか。

で、どうなんだ?



うん。
ローエンの奴がいいよな?



誰か居るのか?



俺ほどの商店主になれば簡単だ。
無料でやってやるよ。



それはありがたき幸せ。



ふふぅん。
ギ・バトスって貴金属を扱っている
古株の行商人だ。
恐れ知らずの男でなぁ。
関わっちゃならない奴らと仕事をしている。






はむ。

ぬしは食べんのかや?



あぁ。
途中で食べてきた。



それは何じゃ?



ん?
手紙だよ。



ふぅん・・・



市場でパンを買っている最中に
マルクんとこの小僧が届けてくれたんだ。



ふむ。
何と書いてあったんじゃ?



今読むと結構笑えるぞ。



ぁ・・・



ん?
ぁ?



わっちは字が読めぬ。



あれ?
そうなのか?



まず覚える字の種類が多すぎる。
そして
不可解な組み合わせが多すぎる。



一応覚えようとしたのか?



じゃが腹が立ってやめた。
字が読めなくとも
獲物は捕れるからの。



で?
何と書いてあったのじゃ?



今年は北の大遠征が中止になったので
武具の扱いにご注意を。



ん?



・・・



ふふ。
大損する前に言って欲しかったの。



まったくだ。
情報が無ければ
我々商人は戦場で目隠ししているようなものさ。



それより!



ん?



今日は祭りじゃな!



ぁ・・・



ぁ?



うん
悪いがちょっと回りたい所が出来てな。



・・・



冗談でもそういうの
やめてくれないか。



やはりぬしはこういうのに弱いかや?
覚えておこう。



はぁ・・・



わっち一人で・・・
というのはどうかや?



駄目だ
と言っても行くんだろ?



ぁぅ・・・
それはそうなんじゃが・・・



あんまり派手に使うなよ。



だからぬしは好きじゃ!
うふふ。



そいつはなぁ
トレニー銀貨ほどの価値は無いから
細かい買い物をしても嫌な顔をされない。
ほどほどに楽しんでおく・・・



くぅ・・・



どうした?



ぅ・・・ぅ~ん・・・
やはり一人で行ってもしょうがない気がしてのぉ。
そっちに連れてってもらえるなら
銀貨は返しんす。
何の用事なのかや?



あぁぁ・・・いや
同じ商会の人間に会うんだが・・・






それで・・・?






わっちと連れ立っておるのが悪いなら
離れておる。
それでも良いから連れてっておくれ。



ほんとにすまないが
このままその人の紹介で別の所に
行くかもしれない。
外で待ってもらうにしても
ほとんどずっとになる。

明日からはたっぷり付き合ってやるから
今日は一人で我慢してくれないか?



ぅむ。
うむ。
ぬしの邪魔をするのも本意ではありんせん。
一人でだらだらしてきんす。



悪いな。



そうじゃ。



ん?



帰りが二人になっておったら
ぬしは悪いが部屋から出てくりゃれ。



・・・



くふ。
ぬしの可愛い顔が見られたから
1日くらいは大丈夫じゃ。



ったく・・・



今の所ぬしの腕の中が一番じゃ。
安心するがよい。

ははははは。






まだだな。
じき来るじゃろ。
棺おけを縦に潰したような奴じゃ。



棺おけを縦ですか?



あぁ。



ガチャ



ぁ?



ぁ・・・



宿の件
助かりました!



こちらこそ。
随分料理を頼んで頂けた様で。



味にうるさい連れが絶賛していましたよ。
魚の目利きが出来てるって。



本当ですか?!
嬉しいな。
またとびきりの魚を買い付けてきますよ。



鯉が特に美味いと言ってました。



鯉ですね。
わかりました。

ところでこの後は何か?



えぇ。
バトスさんとちょっと・・・



そうですか・・・



何か?



町をご案内しようと思ったのですが・・・

えっと・・・
ロレンスさんのお話を伺えば
その・・・
見聞も広まる気がしますし・・・



ホロも・・・
町を見て回りたいと
朝からごねていたのですが。



ぁ・・・
あの・・・
もしよろしければ
ホロさんだけでも・・・



・・・



ぁ・・・その・・・
実は今日はもう仕事が無くて暇なので・・・



ぁ・・・そんな・・・
申し訳ないです。



いえ
一人で居ても儲けた分を飲んでしまいますから。



そうですか。

ただ・・・
もう宿には居ないかもしれませんが・・・



ではいらっしゃったらお誘いしてみます。
宿に仕入れの相談もありますので。



ありがとうございます。



いえいえ。

この次はロレンスさんも是非!

ぁ・・・



クラフト・ロレンスさんですね?



えぇ。
ぁ・・・



始めまして。
ギ・バトスです。

北の地方の伝説を?



えぇ。



それは珍しい。

何か商売の種にでも?



いえ。
ただの酔狂です。






まだお若いのにいい趣味だ。
私が伝説や昔話に興味を持ったのは
最近です。

行商で何十年も同じ場所を行き来してきて
そのほんのわずかな地域の事を
熟知したつもりでいました。

しかし
ふと思ったんですよ。
そこには何百年も前から人が行き来していて
当たり前ですが
私はその積み重なった時間の事を
全く知らないのです。

遠い昔に戻ることは出来ませんし
もうこの歳ではどこか遠くへ行く気力も
ありません。
そうなるとお話としてでも
知りたくなったのです。

そう。
知られざる時間がそこにはあります。
その時代の人間はもう誰も居ない。
しかし伝説と言う名の記憶はずっと行き続けていて
私たちに何かを語りかけてくれる。



何となくわかります。

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