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2011年7月11日月曜日

狼と香辛料II 0 2/3



狼と香辛料II 0 2/3





人と旅をしたり暮らしてきたことは何度かあった。
だが今は
それらを思い出す余裕はない。

昨日の連れは何をしていたか?
今日の朝はどうだったのか?
それらを考えるのがあまりに忙しいのだ。

のんびり故郷の事を思い出しては
めそめそしていたのは最初だけ。

こんなに刺激に満ちた毎日では
おちおち悲しんでもいられない。
楽しくないと言えば嘘。
むしろ楽しすぎて不安なくらいだ。






ぅぅぅ・・・
ん?
重い・・・
なぜ宿屋に?

う~む・・・

何じゃ!
今のは?
現実なら一生の不覚・・・

ただの悪夢じゃ。
無かったことにしよう。

なんでじゃろうか?
あの間抜け面の前では
ついつい隙を見せてしまう。

気に入らなければ怒り
面白ければ笑い
およそ賢狼の名に相応しくない姿をみせてしまう。

やはりこれじゃ。
いつ敵に襲われてもすぐに反応できる
この形こそわっちに相応しい。
ふふふふふ。

その点
連れと来たら
アホ面丸出しじゃ。
まるで頭の悪い猫じゃ。

まぁあれくらい無防備で無神経でなければ
人の世は渡っていけぬのかもしれぬなぁ。

うむ?
なぜ居らぬ?
肝心な時にそばに居らぬとは
役にたたぬ雄じゃ。

ん?



コツコツコツ



ぁ!

ふさふさ

なんでじゃ?
わっち。



コンコン



ぁ!



キィ
ガチャ



はぁ。



キィ



コツコツコツ



やっと帰ってきたか・・・



や・・・



なぜ体調が悪い事を黙っていた?



ぁ・・・いや・・・



子供じゃないんだ。
倒れるまで気がつかなかったとは
言わせないぞ。

万が一
これが旅の途中だったら
どうするつもりだったんだ?

お前にはわからないかもしれないが
森や荒野で体調を崩せば
最悪、死につながる。



ぁむ・・・



本気で心配したんだぞ。



すまぬ。



それで
どうなんだ?



たいした事ではない。
疲れが出ただけじゃろう。



何かその・・・
特別な病じゃないんだろ?



安心せい。



そうか。
良かった。



ぁ・・・



本気でほっとした。



大げさなやつじゃな。



いや
あれこれ考えたら
いろいろ不安が渦巻いてしまってな。



ぁ?



もしかして
もしかしたら・・・



なんじゃ?
言うてみよ。



ぁ・・・いや
もしかして玉ねぎを食ったせいなのかと・・・



はぁ?!

ふぅ。
わっちは犬ではありんせん。



だよな。
賢狼だもんな。
はっははははは。



ははは。
じゃがせっかくの酒と馳走を満喫できなかったのは
残念じゃ。

ぁ・・・



俺は商人だぞ。
そこは抜かりないさ。
残ったものは包んでもらってきてある。



本当かや?



あぁ。
すぐに出してやろう。



うんうん。



と言いたいところだが・・・



ぁ?

ぅわ!



やっぱり熱があるな。
相当疲れてたんじゃないのか?



ぁ・・・
ぬしのせいじゃ!



はぁ?!



ぬしの指はちょっと硬くて
狼の鼻先に似ておるのじゃ。
鼻をこすりつけてくるというのは
人間で言うと・・・



ん?



ちょっと言えぬ。



なんだ?
それ。



何でも良い!
もう良い!



ふむ。



ぁ・・・



とりあえず食事はおあずけだ。

ゆっくり眠れ。



ぅむ・・・






ロレンス!



暖かい・・・






ぁ・・・



ぁ・・・



コンコン

キィ



ホロ。
起きてるか?



見ればわかるじゃろ?



体調はどうだ?



起きられぬ。



本当か?

確かに。
まだ顔色は死にそうなお姫様みたいだな。



じゃが腹は減った。



それなら安心だ。
じゃあ粥でも作ってもらうか。



喉も渇きんす。
それ水かや?



あぁ。
いや
お前、昨日熱があったから
リンゴ酒をな。



ガバ!



ほんとかや!



お・・・おい・・・
大丈夫か?



くくく・・・



普段この半分でも
おとなしくしてくれるといいんだがな。



おとなしく荷馬車で寝ていれば
ぬしは怒るじゃろうが。



ただ俺だけ起きているなんて
不公平だろ?



おとなしくしてたら
飯のときにぬしに多く食われてしまいんす。



ふ。
身体が大きいんだから
当然だろ?



ならわっちも対抗して
態度を大きくせねばの。



む・・・



ふふふ。

ぅ・・・



どうした?



ぅ・・・
味が・・・



あぁ。
薄めてあるからな。



薄めすぎじゃ!
鼻が馬鹿になってしまったのかと
思いんす。



熱があるときには
薄いリンゴ酒だ。







ん?
お前、この手の知識は無いのか?



わっちは賢狼じゃからな。
世の中には自分の知らない事が
たくさんある事くらいなら
知っておる。



ぅん。
病とは人の身体の中の釣り合いが
崩れる事によって起こる。
潮の満ち干のようなものだ。
で、釣り合いが崩れたときは
人がとる4つの状態を調節して治す。



4つの状態?



そうだ。

熱い、冷たい。
乾いている、湿っている。
の4つだ。



それで?



それは食べ物によって
調節する事が出来る。
お前は熱があったから
冷たい食べ物が丁度いい。

だから
リンゴだ!



わっちは生のリンゴのほうが
良かったんじゃぞ。



それじゃぁ駄目なんだ。



りんごは冷たいが
乾いている食べ物だからな。
体調の悪い人間は乾いているから
湿らせないといけない。

そのために飲み物である必要がある。
だったら酒にすれば気分が良く
だが強い酒は熱いから
その力を薄めないといけない。



で、わっちは他に
何を食べさせてもらえるのかや?



あぁ
疲労が蓄積して熱が出たとあれば
まずこれを冷ます。
また
身体が乾いているはずだから
湿り気を取り戻す。

しかし
湿度は身体を冷やし
冷たすぎると人は憂鬱になる。

以上から
羊の乳を煮込んだ麦粥に
リンゴの切り身を入れて
ヤギのチーズを入れる・・・
なんてのはどうだ?



グルルル

うむ!
それが良い!
わっちはそれが食べたい!



お前・・・
本当はもう全快してるんじゃないのか?

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