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2011年7月27日水曜日

狼と香辛料II 2 2/3



狼と香辛料II 2 2/3





私たちに何かを語りかけてくれる。



何となくわかります。



町の人間は
この中の人々を
あまり良く思ってませんからねぇ。
教会に追われたよそ者ども。
リュビンハイゲン辺りに行けば
縛り首になるような連中だと。



ぁ・・・

ぅ・・・
これは・・・
硫黄ですか?



ははは。
薬石までご存知とは
ロレンスさんはいい商人ですね。

実際の所あの壁は
この風を防ぐと言う目的が
一番大きいかもしれません。



鳥が・・・
多いいようですね。



ふふ。
毒の風が常に臭うとは限りませんからね。



教会が言うところの
死神の手
ですか?

確かにこの辺りは
あちこちから手が伸びてきそうだ。
この区画にはどのくらいの錬金術師が住んでいるんですか?



そうですねぇ。
お弟子さんも含めて20人居るかどうか?
なにぶんにも事故が多いので
正確な数はわかりません。



錬金術師相手の商売と言うのは
儲かりますか?



皆さん錬金術を魔法のようにお考えですが
実際は金属を熱したり
酸で溶かしたりするだけですよ。



はぁ・・・



もっとも魔法を研究されてる方が
いらっしゃるというのも事実ですが。

ん?

私も噂で聞いた程度です。
この区画に住んでいる方は
皆さんいい人たちですよ。



それは何よりです。



ま、取引相手ですから
悪い人たちとは
口が裂けても言えませんが。



あはは・・・



そんなに緊張せずとも
実に気のいい方ですよ。



はぁ・・・



ごめんください。



パサパサ



ぁ!



ぁ・・・



キィ



うわ!



あら
バトスさん。



お久しぶりです。
お元気そうで何よりで。



それはこっちの台詞よ。
あら・・・
いい男。



ぁ・・・



でもその顔は私を魔女だと思ってる顔ね。



ぁ・・・



何ならそのように紹介しましょうか?



やめてよ。
ただでさえ辛気臭い場所なんだから
だいたいこんな綺麗な魔女が居る?



美しさゆえに魔女と呼ばれる奥方も多いようですよ。



相変わらずお上手ね。
さぞやあちこちに巣がおありなのでしょうね。



ん・・・
うほん。
それで姉さん
今日はこちらの方が・・・



行商人のクラフト・ロレンスと申します。
リアン・ルーベンス氏はご在宅でしょうか?



なんだ話してなかったの?



ぁ・・・



あぁ・・・



私がリアン・ルーベンスです。



ぇ?



男みたいな名前でしょ?



あぁ・・・
あぁ、いえ・・・



うふ。
リアナとでもお呼びください。






それでご用件と言うのは?



突然お邪魔した非礼をまずお詫びします。
実はルーベンスさんが・・・



リアナです。



ぁ・・・
あ、失礼しました。



いいえ。



ぁ・・・

実はリアナさんが
北の地方の伝説に詳しいとお聞きしまして。



北の?



はい。



商いの話しかと・・・



ご冗談を。



お望みの話を私が知っていればいいけど・・・



私がお聞きしたいのは
ヨイツという町についての伝説なのですが・・・



あぁ・・・
月を狩る熊に滅ぼされた町ですね。
えっと・・・
確かこの辺に・・・



バサバサ



え~っと・・・
これだわ。

月を狩る熊
イワラビル・ヘッド・ヘンド
って発音かしら?
その熊に滅ぼされた町、ヨイツ。

かなり古いお話ですけど
その熊のお話ならいくつかありますよ。

ロレンスさん。



ああぁ・・・
せめてヨイツの場所だけでも
わかりませんか?



ヨイツの場所ですか?



はい。
とある理由から探しているんです。



場所・・・
場所・・・
場所・・・



ぁ・・・




(ストップ)



ぁ・・・



思い出した。
クロアニアよりももっと北を流れる
ローム河の源に
レノスという町があるのをご存知?



はい。
毛皮と材木の町ですよね。



そこにこんな昔話があるわ。

遥かなる昔
村に一匹の大きなる狼が現れり。
名をヨイツのホロウと名づけたり。
身の丈見上げるほどに高し。

村への天罰かと思いしが
ホロウは東の深き森より出で
南へ向かう途中と語れり。

酒を好み折節娘の姿になり変わりて
村の娘と踊れり。
見目麗しく年のころ若く
狼の尾はそのままに。

その年より実り多き年月続き
我ら麦束尻尾のホロウと名づけたり。

お役に立てた?



え、えぇ。
レノスから東の深い森となれば
限られますからね。
十分な手がかりです。



それは良かったわ。



このお礼は近いうちに是非。



私はこのとおり
教会から追われても
異教の地の伝説が大好きなの。

それも教会に配慮して中身を捻じ曲げていない
きちんとした言い伝えどおりのお話がね。

ロレンスさんは行商人のようですし
何か面白い話の一つもあるんでしょ?
それを聞かせてもらえれば
お礼なんか結構よ。



わかりました。
では南の麦の大産地で
長い間豊作を司っていた狼の話をいたしましょう。






いやぁ
実に久しぶりです。
伝説武勇や魔法使いの話で盛り上がったのは。



子供の頃は
いつもそんな事ばかり考えていた気がしますが
いつからでしょうね。
それが作り話にしか見えなくなってしまったのは。



ふぅ・・・






よぉ!
色男。



ローム河の源流にレノスって町があるだろ?

おい
入れすぎだ。



すみません。



なんだ。
ニョッヒラの情報が
もういくつか集まっていたんだが。



悪いな。
ちょっと事情が変わった。



ほぉ。
連れと仲たがいという噂は本当だったか?



何だって?



隠すな隠すな
この色男。
お前が上等な宿に
えらく美人の修道女と泊まっているのは
周知の事実だ。
まったく神をも恐れぬ男め。



俺と連れは酒の肴になるような間柄じゃない。
だが仲たがいって何だ?



ついさっきだがな。
お前の連れとうちの組合の若い奴が
連れ立って歩いていたって話が
入ってきたんだ。
随分楽しそうにしてたらしいぞ。



あぁ。
アマーティー・・・さんか。



なんだ。
もうあきらめてんのか?



そうじゃない。
俺は今日1日用事があって
連れの相手が出来なかった。
そこで
アマーティー・・・さんが暇だったから
案内をかって出てくれた。



ぁ・・・



ん・・・



つまらない結果で悪いが
つまりそういう事だ。
ぅん。



ふ~ん。

だとしても俺はアデーレの奴が
アマーティーと一緒に歩いていたと聞いたら
もう居ても立っても居られなくなるぜ。



あたしが軽薄って事かい?



ぁ・・・馬鹿!
そんなはずがあるか?
お前!

お前だってアマーティーのしたたかさは
知っているだろ?



そりゃね。
南のほうの結構名家の生まれで
そこを飛び出して一人で商売を始めちゃって
成功してるわけだし。



ん・・・



なんたって優しいからね。
女なら誰だって惚れたくなるさ。



聞いたか?
俺は嫉妬の炎で燃え上がっちまうぜ!



そしたらあたしはその火で
アマーティーさんに美味しいパイを焼いてやるよ。



ア・・・アデーレ・・・






同じ行商人だったよしみで忠告するが
アマーティーには気をつけろ。
あの歳の奴らが一度夢中になったら
どんな無茶でもやってのけるぞ。



バタン



ハァハァハァ



はぁ。
馬鹿だな。
俺も。






月を狩る熊に滅ぼされた町ですね。

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